早稲田大学マニフェスト研究所では、「どう自治体を変革・経営していくか?」を考える場として研修会をセミナを開催してきました。
今回は、「事例に学ぶ自治体改革~ 生成AIとDXで実現する自治体の未来 ~」と題し、生成AI活用の先進自治体として、東京都葛飾区、東京都町田市の事例を取り上げました。
■ セミナ参加者が業務に生成AIを活用している割合は61%
セミナ冒頭、早稲田大学マニフェスト研究所・招聘研究員の西川裕也より、セミナ開催の趣旨と事例から学び、よりよい政治や行政をつくる「善政競争」について説明があった。
また、事前に参加者に実施したアンケート結果から、参加者が業務に生成AIを活用している割合は61%であり、生成AI利用に関するルールやガイドラインを策定している団体が64%であることが共有された。
セミナの性質上、一般的な自治体組織の状況よりも、生成AIやDX活用に対して意欲があり、環境も整っている自治体の参加者が集まったことがみてとれる。
■ 葛飾区の取り組み「区独自データ学習」
1つめの事例として、東京都葛飾区より、「業務をスマートに!葛飾区の独自データを学習した生成AIの活用」というテーマで発表がなされた。担当は葛飾区政策経営部 DX推進課さま。
従来の生成AIサービスを自治体が利用する際、①回答の質(学習データがインターネット上の膨大なデータであり、自治体個別のデータではない)、②セキュリティ(やりとりが学習されるおそれ)の点で利用には懸念もあった。
今回、葛飾区ではNTTアドバンスドテクノロジー社との協力で、「かつしかChat」というシステムを構築。「RAG(ラグ)」という技術を使って、葛飾区データをもとにして利用者の期待する回答を生成している。
RAGの技術的な解説として、NTTアドバンスドテクノロジーの佐藤さまより補足があった。
■ 町田市の取り組み「体系的なデジタル化施策の展開とアバター利用」
次に東京都町田市より、「市民にとって『やさしい』バーチャル市役所へ ~生成AIと3Dアバターで実現する次世代UX~」と題し、町田市政策経営部経営改革室長 兼 デジタル戦略室長 高橋 晃 氏とデジタル戦略室 担当係長 和田 進吾 氏から発表があった。
まず、2名がアバターで登場。場内からどよめきがあった。説明内容としては、「町田市デジタル化総合戦略2024の概要」、AIナビゲーター、オープンデータなど基礎情報を蓄積している「まちだベーシックデータ・プラットフォーム」の説明などがなされた。
全編、アバターと化した担当職員と、趣味で誕生した公式キャラクターによる動画での説明が行われ、町田市の活用度合いに参加者も多くの衝撃を与えたようだ。
2自治体の発表後、登壇者が集合してのセッションに。
事前の質問や、寄せられたチャットでの質問や感想に、2自治体の担当職員が真摯に回答いただき、議論も深まりました。
会は最後、早稲田大学マニフェスト研究所事務局長で熊本市政策アドバイザーの中村健より、いま自治体がもつ課題の解決と、DXや生成AIを活用していくための組織・人材づくりの重要性について強調されました。
申込時の参加希望者数ベースで、約300名の自治体職員にご参加いただき、盛会に終わりました。
次回、今年度中にあらためてオンラインセミナを開催する予定だ。
(早稲田大学マニフェスト研究所 招聘研究員 青木佑一)