■より有意義な視察・研修の場を提供する
2017年11月、早稲田大学マニフェスト研究所議会改革調査部会は「合同視察研修」を早稲田大学日本橋キャンパス(東京都中央区)で開催しました。
当研究所では、2010年度より「議会改革度調査」をスタートしましたが、その後視察を希望する議会が年々増加したため、日常業務のなかでは受け入れきれなくなっていました。また、地域が生き残りをかけて政策競争を行う地方創生時代においては、「地方議員の視察のあり方」には、さらに厳しい目が向けられます。そこで、より住民起点で有意義な視察・研修が行えるよう、期間を限定し「合同視察研修」の場を初めてつくることにしました。
内容は、講師と参加議会との相談により進めていきますが、主に(1)議会改革の理念と背景、(2)議会改革度調査の現状と課題分析、(3)個別テーマ、の三本柱で構成しています。なかでも、(3)個別テーマは、「議員間討議」「議会報告会」「ICTと議会」のなかから、その議会のいまの課題にあったテーマを選ぶことができます。
また、1議会から必ず3名以上で参加をお願いしていることも大きな特徴です。もちろん議員個人での研修も大切ですが、「議会全体」を変えようと思った場合には、仲間の理解が必要です。そのため、会派や委員会、議員有志など3名以上での参加を条件としました。
■合同視察の様子 ~他議会と一緒になって見えるもの~
11月15日(水)午後には、茨城県那珂市議会15名と静岡県掛川市議会10名が参加しました。いずれの議会も、議会事務局職員数名が同席し、議員と同じように研修を受けました。議員と議会事務局職員は、いわば議会という名の「チーム」です。同じ内容を学ぶことで、議会改革に向けた足並みがそろい、さらなる議会活動の充実につながることが期待されます。
研修では、はじめに、当研究所事務局長で早稲田大学非常勤講師の中村健が議会改革の考え方とともに議会改革度調査について解説しました。中村は、徳島県川島町長を経験しており、現在は自治体のまちづくり支援や総合戦略の策定、議会改革支援など全国で幅広く活動しています。その経験をいかし、それぞれの議会の現状に合わせた多角的な講演や提言を行うようにしています。
また、形式は、一方的に話を聞くスクール形式ではなく、対話(ダイアログ)形式で行います。講師と参加者だけでなく、参加議会同士の質疑応答をときには行うことも、合同視察研修の醍醐味のひとつです。例えば、掛川市議会が導入したいと考えている「議員間討議」を那珂市議会はすでに実践していたため、どのように活用しているのか掛川市が那珂市に学ぶ場面もありました。
資料としては、参加議会すべてに、議会改革55項目以上について、先進議会や全国平均と比較することができる「議会改革診断レーダーチャート」を提供しています。このレーダーチャートは、2016年度を対象に実施した議会改革度調査をもとに作成しており、実践と理論をセットで学ぶことでより有効な議会活動につなげてほしいと考えています。
■実践「議会報告会」へ向けたグループワーク
二つの議会が選んだ、個別テーマは「議会報告会」でした。掛川市議会も那珂市議会も議会報告会をすでに実施していますが、参加者の固定化や高齢化など、互いに似たような悩みを抱えています。
そこで、まずは、それぞれの議会が現状と課題をあげ、それについてどのように解決していけばよいのか、先進事例の紹介を交えながら全員で考えを出し合いました。そののち、5人程度でグループを組み、課題について話し合いと発表をするグループワークを行いました。
■議会改革の意識が変化
研修会終了後に行ったアンケート結果では、「研修を受ける前より議会改革の意識が高まったか?」との問いに対して、100%が「意識が高まった」と回答しました。また、「参加型の研修で内容が身に入った」「3時間があっという間だった」「議会の取り組むべき、目標・分野・課題が明確になった」などのお声をいただきました。
「合同視察研修」は初めての試みのため、今後も改善と試行錯誤を続けていきます。次回は、2018年1月17日(水)、18日(木)、19日(金)の3日間です。お申込みの締め切りは、12月末の予定です。地方創生時代における議会に向けて当研究所と一緒に学びたいという方やご関心をおもちになられた方は、事務局(TEL:03-6214-1315)までお気軽にご相談ください。
※お申込みが1団体の場合は、1団体のみで受講いただきます
最後には、ともに学んだ議会同士、講師と一緒に記念撮影を行いました。
この場が新しい議会づくりへのきっかけになると嬉しいです。